アジャイル開発を元に考えるプロジェクトマネージャのあり方19
システムを提供する側にとって、システムを開発する大きな理由は「儲けるため」です。営利企業は商売でシステムを開発しているのですから、プロジェクトが赤字になれば経営者はプロジェクトマネージャの能力に疑問を持つでしょう。ところが、非アジャイルの開発文化では、基本的には納品後に検品され、ある程度時間が経過したら売上になります。つまり、売掛金の期間が長く、回収できない危険性が高くなる傾向があります。また、その間にシステムを開発する側の資金が回らなくなります。
この問題はビジネスモデルの問題であり、プロジェクトマネージャだけの責任ではありませんが、悲しい事に弱い立場の人間が責任を取らされているのが現実です。日本では特に失敗を考えず成功する事を前提にするので、プロジェクト失敗の根本的原因を考えず、形式的に誰かの頭を下げさしたり、誰かのクビを切ったりする会社が多々存在します。
問題の根本原因は売掛金の期間が長い事ですから、仕掛品(製造途中の製品のこと)の状態のシステムでも価値を持たせればこの問題は解決します。この点に於いても、アジャイル開発の考え方は参考になります。
アジャイル開発ではイテレーションと呼ばれる単位で開発を行います。イテレーションとは2週間程度の期間の事であり、この期間内でユーザーストーリーを実現します。そうすれば、お客様は進歩状況が分かりますし、要望とシステムのギャップも埋まります。また、イテレーションを基準とした個別契約を結ぶ事が可能となり、短い期間で売上が上がります。
非アジャイル開発をしているところでも、スパイラル開発で同様の事を試みる会社もありますが、アジャイル開発とは違い、仕掛品でも動く所に重点が置かれていない(継続的インテグレーションという視点がない)ので、トラブルの原因となっています。
この点から分かるプロジェクトマネージャの役割とは、仕掛品でも価値がある状態に保つ事です。プロジェクトマネージャと経営資源は切っても切れない関係であり、経営資源の内の一つお金についてもよく考えなくてはなりません。ビジネスモデルの甘さもあり、仕掛品でも価値を持たせるのは大変ですが、利害関係者にプロジェクトがもたらす価値を提示し続けないと、プロジェクト失敗と看做されます。
マイナスの部分が目立ちますが、だからこそそれが出来れば、貴方のプロジェクトマネージャとしての価値が上がります。もし貴方が、その能力を評価されない会社に勤めているならば、辞めた方が得策なのかもしれません。