ネタつつき146 - 開発者自身がお客様になる
例えば、お客様にとって要らない機能を売りつけたり、自分だけの都合で人月単価にて人売りをしたりします。しかしながら、お客様はビジネス上の解決策を望んでいるのであって、意味のないなんだか凄いらしい機能や、解決策ではなく人を売り付けられても満足しません。満足どころか、不快感を覚えるでしょう。
昔から「ドックフードを食べる」と言う言葉があります。この言葉はもちろん、犬が食べる食事のドックフードを、食べると言う意味ではありません。ドックフードと言うのは比喩であり、自分で創ったものを自分で使ってみるという意味です。自分で使ってみれば、自己満足ではなく真実を知るきっかけになります。マイクロソフト社が徹底している事で有名です。
とはいえ、業務系のシステムを販売している者達は、ドックフードを食べただけでは、お客様に満足して頂けるものを作れません。何故ならば、お客様はパソコンの操作すらままならない場合もあるからです。私達開発者の様に、情報機器の使い方に馴れていないので、開発者が良いと思った事が良いとは限らないのです。また、お客様が抱えている問題に対する解決策にはなりません。
真にお客様にとってよいシステムを、知るにはどうすればよいのでしょうか?その答えは自分がお客様になる事です。私がシステム開発で初めにする事は、お客様のビジネスを知る事です。さらにお客様の現場を観察します。私はお客様の職場で働いた事もあります。基礎知識を持ってお客様と共に働けば、お客様が満足する事が分かります。すなわち、お客様を知るために、自分がお客様になるのです。
日本のIT業界は多重下請け構造ですので、常に出来るとは限りませんが、自分がお客様になると言う考え方は非常に有用です。私はこの考えでお客様の信頼を得てきました。お客様から同業者だと思われるに至ったこともあります。自分がお客様になれば、成功は保証されていると言っても過言ではないでしょう。
ただし、この考えは技術力が前提です。技術力が無ければ机上の空論になります。如何なる問題に対しても解決できる、技術力が無ければお話しになりません。その辺を誤解しているから、奇妙な言動をするマネージャクラスの人間が存在するのだと思います。
少し余談になりますが、技術力に関してもどうやら誤解が多いようです。技術力というものは、ただ暗記しているだけではあると言えません。情報技術を体現できなければ、本当の意味で技術力があるとは言えません。私は常日頃、心臓が鼓動するように、呼吸を吸うように、あらゆる情報技術がアウトプットできるように訓練をしています。
生涯学習と訓練を続けて確かな技術力を身につけ、その上でお客様になれればシステム開発で失敗する事はあり得ません。その高みを目指して今日も生きています。それが情報技術のプロと言うものだと私は考えています。