アジャイル開発と契約8
性能保証とは、システムもしくはソフトウェアの処理性能や、セキュリティの強度などを保証する事です。つまり、1時間で1万件のデータ処理を行えるだとか、個人情報流出事件を避けられる・・・などといった性能に関する保証をするのが性能保証です。
性能保証については、実務経験者の方でも聞いた事がないかも知れません。というのも、性能保証をしない会社が多いからです。会社が性能保証を渋る主な理由は、3点あります。
1つめは、システムの性能を定量的に測れない点です。システムは複雑な要素から成り立ちます。それ故、システムの性能値を一定にすることもできなければ、公平かつ正確に測る方法はありません。これは、本質的なものなので今後とも不可能だと思われます。
2つめは、サービスの品質を一定に保つ事が出来ない点です。日本のIT産業は、昔からウォーターフォール型モデルを根拠にした、多重請負で仕事を引き受ける体制でした。ですから、下請業者が度々変わります。また、分業体制が長く、元請けの実装能力が不足し、下請けの実力を正確に測る事が出来ません。
3つめは、セキュリティレベルを決定する事が難しい点です。システムもしくはソフトウェアは、セキュリティレベルを無闇に上げればいいというものでもありません。しかし、適切にセキュリティレベルを決定し、それを実施するには全行程でセキュリティに取り組まなければなりません。しかしながら、日本の場合、分業体制が強く、全行程を知っている人材が殆どいません。
こういった理由から、今まで性能保証があまり契約に盛り込まれませんでしたが、セキュリティリスクが高い事を考慮すると、今までどおりエンドユーザーが黙っているという事はないでしょう。何故ならば、セキュリティを無視すると、多大なる損害を負うからです。昨今では、個人情報の流出により、億単位の出費と、社会的信頼の失墜を招いた会社が出現しました。また、サービス品質を保てないというのは、明らかにベンダ側の都合であり、エンドユーザーには関係のない事です。エンドユーザーは、他のサービスと同様に、高い性能保証を求めるでしょう。この世の中の動きに対応するには、アジャイル開発を採用し、対応するしかありません。
続く・・・