実践的オブジェクト指向分析入門17
データベースエンジニアが、オブジェクト指向分析時にするべき事は、概念データモデルの作成です。業務分析によって導き出されたオブジェクトの中で、データベース化するべき対象を見極めます。データベースエンジニアは、企業にとって価値ある情報を見極める役割があるという事です。
ここで注意しなくてはならないのは、データベースエンジニアの多くが、データ中心アプローチで考えている点です。データベースの主流は、リレーショナルデータベースです。ですからデータベースエンジニアは、自然とデータ中心アプローチで考える事に慣れています。このギャップに注意しなくてはなりません。
オブジェクト指向とデータ中心アプローチのギャップを埋めるには、オブジェクトのデータに注意を払います。前に述べた通りで、オブジェクト指向だからと言って、データ中心アプローチの考え方が無駄というわけではありません。オブジェクトにもデータは存在し、そのデータを正規化する事は非常に大事です。データに注目すると、無駄なオブジェクトを発見したり、オブジェクトの対象が見極められたりする効果があります。
実はオブジェクトとデータに共通する考えがあります。それは、集合理論です。オブジェクトもデータも集合として考えると、何の違和感もなくオブジェクト指向とデータ中心なプロ―チを同居させる事が出来ます。ただし、集合理論といっても厳密に考え過ぎると余計に分析できなくなります。
数学的な考えは非常に役立ちます。しかしだからと言って、情報処理=数学でもないのです。情報処理と数学の共通部分はありますが、情報処理は情報処理なのです。集合理論を使用する事もその一環です。あくまでも思考の道具として扱わなくてはなりません。数学的発想に縛られては情報処理が出来ません。