実践的オブジェクト指向分析入門18
システム管理はオブジェクト指向分析で漏れやすい分野です。分析はあくまでも現実をモデル化する事なので、設計と運営に結び付きやすいシステム管理を考えてはいけないと誤解している人が多くいるようです。しかし、現状分析には既存のシステムと業務分析が含まれています。その観点から、現在のシステム管理の状態を分析するのは、オブジェクト指向分析の精神に合致しています。
既存のシステムとそれを扱う体制を分析すると、エンドユーザーが受け入れられるシステムの要件が分かります。人は前よりも面倒なシステムを許容しません。真システム導入後に負担が余りにも増えるのは本末転倒です。システムはあくまでもエンドユーザーの業務を効率化するために構築されるものです。ただシステムを開発するのではなく、それがどう運営されるかまで考えてなくてはなりません。
既存システムを持たないエンドユーザーであっても、システム管理の視点は重要です。エンドユーザーがどれだけ情報処理に対応できるのか分析する事は大事です。情報機器を上手く使いこなせない人が多い場合は特に、システム開発だけではなく教育にも工夫が必要です。システムが導入されてから教育を行うのではコストが高すぎます。コストが高いシステムの導入は敬遠されますので、導入コストを下げる事は非常に大事です。
主役はあくまでもエンドユーザーであり、システムや開発者が主役であってはなりません。派手で目立つシステムよりも、地味で効果的なシステムを開発しましょう。開発前の状態ではエンドユーザーは派手さを好みますが、開発後は地味さを求めます。矛盾していますが、それが人間心理です。誰しも生活に負担がかかる電子機器を望みません。例えば、毎日予定どおりの生活を強要される携帯電話を、買う人はまずいないでしょう。携帯電話が根付いたのは、人間の生活を邪魔しないからです。システムも携帯同様、エンドユーザーの業務を邪魔してはなりません。開発者は陰の存在なのです。例えるならば、良い開発者は忍者だといえるでしょう。
システム管理とセキュリティは対立しやすいので、その辺は十分に注意して下さい。セキュリティを高めると、システムの使い勝手は悪くなります。しかし、だからと言ってセキュリティをないがしろにできる時代ではありません。そのバランスが大事です。