実践的オブジェクト指向分析入門35
今までの作業で、必要なオブジェクトとプロセスの全体像が分かりました。次にするべき作業は、重要な動的振る舞いを持つオブジェクトの分析です。
オブジェクト指向分析を行うと、動的な振る舞いを持つ重要なオブジェクトが見つかります。例えばユーザーオブジェクトは、システムに対して動的で複雑な振る舞いをします。動的振る舞いを持つ重要なオブジェクトは、システムを理解する上で重要な情報をもたらします。特別に分析する必要があります。
UML内で動的な振る舞いを持つオブジェクトを、分析するのに向いた図はステートチャート図です。ステートチャート図を用いると、対象となるオブジェクトの状態と事象の関係が分かります。
ユースケースとアクティビティ図でシステムを分析すると、一つのオブジェクトがどの様に振る舞うのかが分かりづらくなります。この事態を放置しておくと、分析に漏れが生じます。そこで、複数のユースケースに登場する重要なオブジェクトを、ステートチャート図を用いて分析するのです。
ここで、重要なオブジェクトという点に注意して下さい。オブジェクト指向分析初心者は、全てのオブジェクトのステートチャート図を書いてしまいます。しかし、動的振る舞いを持つ重要なオブジェクト以外に、神経をすり減らすのは得策だとは言えません。
過剰な分析をすると、重要でない些細な部分に注意が向き、システムの本質や全体像を捉えられなくなります。システムの本質と全体像をとらえ、重要なものに意識を集中させるのが正しい分析です。