ネタつつき106 - 開発プロセスはビューである。分業制の先はまだない。
何故ならば、発案された時代では、ウォーターフォール開発モデルは実情に合った素晴らしい理論だったのですが、現在は開発規模が増大し、なおかつ短納期高品質が求められているからです。それに加え、ネットワーク・セキュリティ・データベース・テストといった分野が進化し、全行程に渡って考えなければならない課題が沢山あります。
また、どの業種も業務プロセスを直線的に行う事はありません。現代は多品種少量生産が求められている時代です。少品種大量生産が求められている際には、直線的な業務手順は有効ですが、多品種少量生産が求められている際には有効ではありません。情報産業だけが旧時代の直線的な業務をしていい筈がありません。
ただし、ウォーターフォール開発モデルが定義している直線的な作業手順にも意味がないわけではありません。例えば、要求が確定していない状態で製品の実装(プログラミング)をするのは無謀です。失敗するのが目に見えています。しかしその一方で、プログラミングを知らない上流工程の人が設計したシステムには間違いが多いのも真理です。これは一見矛盾しています。どういう事なのでしょうか?
この課題に対する私の答えが「開発プロセスはビュー(視点)である」です。システムは複雑な情報であり、それをビューを通して見ていると私は考えています。システムを経営者として捉える事、プログラマとして捉える事、システムエンジニアとして捉える事・・・。情報システムはそれらは全てが可能であり、どれか一つだけが正しいのではありません。すなわち、それら全ての和集合だと言えます。
それ故、お客様の相談を受けた時点から全てのビューで情報システムという名の集合を見ています。「設計が終わってから実装を考えよう」というふうな姿勢では盲点が生じ、お客様の要望を叶えられません。経営者、コンサルタント・システムエンジニア、プログラマ、データベースエンジニア、ネットワークエンジニア、セキュリティエンジニア、テストエンジニア、事務員、営業マン、経理マン・・・それら全てのビューを持って情報システムは開発しなくてはなりません。
情報システムは誰か一人のためのものではありません。特に業務システムは多くの人が関係しています。それら全ての人が満足するシステムの開発を目指すのが、我々情報技術者の仕事ではないでしょうか?
アダム・スミスが提唱した分業の時代はもう終わっています。他の業種は既に、ビジネスプロセス・リエンジニアリングを通して、分業制による弊害を取り除き、それよりも先に向かっています。ドックイヤーだとか最先端だとか言われている情報産業だけが取り残されているのが実情です。
日本のIT業界は残念ながら未だにアダム・スミスの時代を生きています。私はそれが残念でなりません。この情報化社会に於いて重要な情報産業が、旧時代を生きているというのは皮肉以外のなにものでもありません。日本企業のITへの投資率が低い一因がここにあると思えてなりません。
日本のIT産業の構造を変える事は困難ですが、先ずは私達技術者が旧時代的態度を止め、時代に即した適切な態度を取らなければならないのではないでしょうか?