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計算機の基本原理を味わおう29 - 命令形式を見直しモジュール化に備える

 この記事は、「計算機の基本原理を味わおう28 - モジュールの発想源を知ろう」の続きです。前回は、モジュール化の考え方について解説しました。今回は、モジュール化を実現するべくやるべきことを解説します。
 現在、最小計算機にコードセグメントを変更する術がありません。では、どうすればいいのでしょうか?答えは「命令で対応する」です。CPUは命令に従って動作するものですから、命令で対応するのが自然の流れです。ただし、命令といっても、新命令は必要ありません。最小計算機には比較移動命令しかありませんが、それだけで十分です。命令を増やすと、最小の名に反しますので、比較移動命令の形式を検討し直すことにします。
 比較移動命令は、特別な数値を用意することにより、影響を与える対象を特定していました。同様に、コードセグメントにも特別な数値を対応付けします。コードセグメントの数値を決めるにあたって、仕様を簡潔にするために、他の数値についても対応付けをやり直します。
 特別な数値と対応されているものは、定数の0、定数の1、CPU停止の指示、比較フラグ、プログラムカウンタ、コードセグメントです。各対象と数値の対応を書きます。

・定数の0:0
・定数の1:1
・終了フラグ:255
・比較フラグ:254
・プログラムカウンタ:253
・コードセグメント:252

定数以外は255から数値割り振りをしている理由は、今後増える可能性があり、2とか3とかの小さな数値を指定できるように維持したいからです。もし、2、3、4、・・・という具合に数値を対応付けすると、よく使う小さな数値が使用できなくなります。255から割り振ることにしました。
 対応付けを変えると、3つのオブジェクトを変更しなくてはなりません。とはいえ、あまり大きな変更ではありません。ちょっと修正するだけです。

public class Cpu
{
    //実行環境に関する情報を取得する。
    public static ExecuteEnvironment GetEnvironment( )
    {
        ExecuteEnvironment result =
                new ExecuteEnvironment() {
                    ZeroAddress = 0,
                    OneAddress = 1,
                    LastAddress = 255,
                    CompareFlagAddress = 254,
                    ProgramCounterAddress = 253,
                    CodeSegmentAddress = 252
                };
        return result;
    }
}

//命令を解析するオブジェクト。
public class Decoder
{
    //命令をデコードする。
    public CompareMove Decode( IEnumerable<bool> binary )
    {
        CompareMove result = new CompareMove( binary );
        bool imFlag = false;
        result.Destination = this.GetOperand(
            result.Destination, ref result, true, ref imFlag );
        result.Source = this.GetOperand(
            result.Source, ref result, false, ref imFlag );
        return result;
    }

    //オペランドを取得する。
    private IOperand GetOperand(
        IOperand ope,
        ref CompareMove target,
        bool setFlag,
        ref bool isImmediate )
    {
        IOperand result = ope;
        if ( isImmediate ) {
            return ope;
        }
        if ( ope.Value ==
            this._exeInfo.ZeroAddress ) {
            result = new Immediate( 0 );
        } else if ( ope.Value ==
            this._exeInfo.OneAddress ) {
            result = new Immediate( 1 );
        } else if ( ope.Value ==
            this._exeInfo.LastAddress ) {
            result = this._exeInfo.IsStop;
        } else if ( ope.Value ==
            this._exeInfo.CompareFlagAddress ) {
            result = this._exeInfo.CompareFlag;
            target.CompareFlag = true;
            return result;
        } else if ( ope.Value ==
            this._exeInfo.ProgramCounterAddress ) {
            result = this._addresser.ProgramCounter;
            isImmediate = true;
        } else if ( ope.Value ==
            this._exeInfo.CodeSegmentAddress ) {
            result = this._addresser.CodeSegment;
            isImmediate = true;
        } else {
            var ms = new MemorySnapShot(
                this._addresser,
                this._exeInfo.ReferenceMemory,
                ope.Value );
            result = ms;
        }
        if ( setFlag ) {
            target.CompareFlag =
                this._exeInfo.GetCompareFlag();
        }
        return result;
    }
}

修正部分だけ掲載しました。オペランドを設定する部分は、ついでにリファクタリングしました。このプログラムを参考に、貴方のプログラムを修正してください。
 プログラムを修正したらテストです。正しく動作するかテストしましょう。

class Sample
{
    static void Main()
    {
        ExecuteEnvironment ex = Cpu.GetEnvironment();
        ProgramCounterUpdateTest( ex );
        CodeSegmentUpdateTest( ex );
        CpuStopTest( ex );
        Console.WriteLine( "テスト終了" );
        Console.ReadLine();
    }

    //テストを実行。
    static Cpu Execute( ExecuteEnvironment ex,
        CompareMove target )
    {
        //CPUを用意
        Cpu cpu = new Cpu( 0, 1, new Memory() );

        //次の命令を実行すための準備用命令
        var flagSet = new CompareMove();
        flagSet.Destination =
            new Immediate( ex.CompareFlagAddress );
        flagSet.Source =
            new Immediate( ex.OneAddress );

        //メモリにこれから実行する命令を書きこむ
        var opes = new CompareMove[ ] { 
            flagSet, target };
        cpu.CodeWrite( opes );

        //命令を実行
        cpu.Run();
        cpu.Run();

        return cpu;
    }

    //プログラムカウンタを更新できるかテスト。
    static void ProgramCounterUpdateTest( 
        ExecuteEnvironment ex )
    {
        //プログラムカウンタ更新命令
        byte value = 10;
        var target = new CompareMove();
        target.Destination = 
            new Immediate( ex.ProgramCounterAddress );
        target.Source = 
            new Immediate( value);

        //実行&結果チェック
        Cpu cpu = Execute( ex, target );
        if ( cpu.Addresser.ProgramCounter.Value != value ) {
            Console.WriteLine( "テスト失敗!:PCの値{0}", 
                cpu.Addresser.ProgramCounter.Value );
        }
    }

    //コードセグメントを更新できるかテスト。
    static void CodeSegmentUpdateTest( 
        ExecuteEnvironment ex)
    {
        //コードセグメント更新命令
        byte value = 12;
        var target = new CompareMove();
        target.Destination = 
            new Immediate( ex.CodeSegmentAddress );
        target.Source = 
            new Immediate( value );

        //実行&結果チェック
        Cpu cpu = Execute( ex, target );
        if ( cpu.Addresser.CodeSegment.Value != value ) {
            Console.WriteLine( "テスト失敗!:CSの値{0}",
                cpu.Addresser.CodeSegment.Value );
        }
    }

    //CPUをストップできるかテスト。
    static void CpuStopTest(
        ExecuteEnvironment ex )
    {
        //CPU停止命令
        var target = new CompareMove();
        target.Destination =
            new Immediate( ex.LastAddress );
        target.Source =
            new Immediate( ex.OneAddress );

        //実行&結果チェック
        Cpu cpu = Execute( ex, target );
        if ( !cpu.IsStop ) {
            Console.WriteLine( 
                "テスト失敗!CPUが止まりません・・・" );
        }
    }
}

このテストをパスすればひとまずOKです。これでモジュールが作れる!といいたいところですが、まだ足りない要素があります。それは何でしょうか?次回を読むまでに考えてみてください。続く...
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テーマ : プログラミング
ジャンル : コンピュータ

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Re: No title

はるさんへ
> 労働基準監督署って本当に労働者の味方なのでしょうか?
残念ながら味方ではないと思います。
日本は大企業寄りの自民党が統治していたこともあり、個人の事なんて考えていません。
私もブラック企業の被害に遭った時行きましたが「労働局は何かをする機関ではありません。聞くだけの機関です。」といわれました。
特許局も「IT技術何て盗まれて当たり前。特許局は守る機関ではなく公開する機関です。」と言っています。
おまけに、政府も「個人の知的財産をとることが犯罪だと思えない。」といっています。
日本は大企業しか考えないところなのです。
この問題については、議員報酬と選挙制度などを含めた国家システムの致命的な欠陥です。
かといって、日本国民も悪くて、戦後70年ほどその事実を容認しています。
ようは国家レベルで物事を考える人が居なくて、個人の利権だけを追求してきた日本人に対する天罰なのでしょう。
国家システムはいわばOS。バグだらけのOS上で何をしても悪い結果しか生まないと考えています。
アベノミクスの3本の矢も、大企業を潤すだけで終わるでしょう。
長くなりましたが、私の結論は「国民の味方なんていない。自己の利権を考える機関しかない。」です。

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