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計算機の基本原理を味わおう32 - 関心事をコントロールしよう

 この記事は、計算機の基本原理を味わおう31 - 抽象化と具象化の狭間で揺れての続きです。前回は、コードセグメント更新時における処理と、そこで発生する横断的関心事について解説しました。今回は、横断的関心事を解決する方法について解説します。
 オブジェクト指向プログラミングを正しく行うために、明確な役割を持ったオブジェクトを複数作成することが多々あります。そうなると、横断的関心事の問題が自然発生します。この問題に対処するにはどうしたらよいのでしょうか?その答えは、オブジェクト指向設計と関心事の分析にあります。
 横断的関心事を解決する方法は確立されていませんが、私個人としては指標を持っています。アスペクト指向で解決するのが一般的ですが、オブジェクト指向の範囲内でもできることがあります。関心事をよく分析し、正しい設計を行えば横断的関心事が横断でなくなります。これからその方法を、最小計算機(ビットマシン)を題材にして解説します。
 今問題となっている横断的関心事は、「新しい機能を追加したとき、複数のオブジェクトを更新する必要がある。」です。具体的には、各々の役割が明確なため、命令解析オブジェクト、命令実行オブジェクト、比較移動命令オブジェクトなどを更新せねばなりません。更新対象となるオブジェクトは、機能にもよりますが、とにかく複数のオブジェクトを更新するのは、危険が伴う上に作業が大変です。これを解決するカギは、イベントと役割の集中化です。
 コードセグメントはレジスタオブジェクトで実装されています。そこで、レジスタオブジェクトに値の更新を知らせるイベントを追加すれば、他のオブジェクトを更新する必要がなくなります。そして、個々のオブジェクトに最小の役割を持たせるオブジェクト指向の原則を少し破り、要求を一手に引き受けるオブジェクトを決定します。そうすることにより、オブジェクトの結合度が減り更新時の負担も軽減します。これは、Facadeパターンの応用です。
 文章だけではわかりにくいので、サンプルコードを掲載します。このコードは、最小計算機の実行環境オブジェクトに、役割を集中させることに決定した場合のものです。

//命令を実現するのに必要な機能と情報を持つオブジェクト。
//解析の手伝いも行う。
public partial class ExecuteEnvironment
{
    //オペランド取得関数を用意する。
    private void InitGetOperandTable( )
    {
        this._getOperandTable =
            new Dictionary<byte, Func<CompareMove, GetOperandResult>>();
        this._getOperandTable.Add( this.ZeroAddress,
            ( CompareMove ope ) => {
                var result = new GetOperandResult( ope );
                result.Result = new Immediate( 0 );
                return result;
            } );
        this._getOperandTable.Add( this.OneAddress,
            ( CompareMove ope ) => {
                var result = new GetOperandResult( ope );
                result.Result = new Immediate( 1 );
                return result;
            } );
        this._getOperandTable.Add( this.LastAddress,
            ( CompareMove ope ) => {
                var result = new GetOperandResult( ope );
                result.Result = this.Executer.IsStop;
                return result;
            } );
        this._getOperandTable.Add( this.CompareFlagAddress,
            ( CompareMove ope ) => {
                var result = new GetOperandResult( ope );
                result.Result = this.Executer.CompareFlag;
                result.Target.CompareFlag = true;
                result.IsCompareFlag = true;
                return result;
            } );
        this._getOperandTable.Add( this.ProgramCounterAddress,
            ( CompareMove ope ) => {
                var result = new GetOperandResult( ope );
                result.Result = this.Addresser.ProgramCounter;
                result.IsImmediate = true;
                return result;
            } );
        this._getOperandTable.Add( this.CodeSegmentAddress,
            ( CompareMove ope ) => {
                var result = new GetOperandResult( ope );
                result.Result = this.Addresser.CodeSegment;
                result.IsImmediate = true;
                return result;
            } );
    }

    //オペランドを設定する
    internal CompareMove SetOperand( CompareMove cmov )
    {
        CompareMove result = cmov;
        bool imFlag = false;
        result.Destination = this.GetOperand(
            result.Destination, true, ref result, ref imFlag );
        result.Source = this.GetOperand(
            result.Source, false, ref result, ref imFlag );
        if ( result.IsZero() ) {
            throw new InvalidOperationException(
                "読み取ったバイナリ値が0でした。" +
                "正しい命令が用意されていません。" );
        }
        return result;
    }

    //オペランドを取得する。
    private IOperand GetOperand(
        IOperand ope,
        bool setFlag,
        ref CompareMove target,
        ref bool isImmediate )
    {
        IOperand result = ope;
        if ( isImmediate ) {
            return ope;
        }
        Func<CompareMove, GetOperandResult> func;
        bool isCompare = false;
        if ( this._getOperandTable.TryGetValue(
            ( byte ) ope.Value, out func ) ) {
            GetOperandResult get = func( target );
            target = get.Target;
            result = get.Result;
            isImmediate = get.IsImmediate;
            isCompare = get.IsCompareFlag;
        } else {
            var ms = new MemorySnapShot(
                this.Addresser,
                this.ReferenceMemory,
                ope.Value );
            result = ms;
        }
        if ( !isCompare && setFlag ) {
            target.CompareFlag = this.GetCompareFlag();
        }
        return result;
    }
}

//命令を解析するオブジェクト。
internal class Decoder
{
    //命令をデコードする。
    public CompareMove Decode( IEnumerable<bool> binary )
    {
        ExecuteEnvironment exeinfo = this._cpu.GetEnvironment();
        var result = exeinfo.SetOperand( new CompareMove( binary ) );
        return result;
    }
}

このコードはちょっと難しいと思いますので解説します。最小計算機において、機能を追加する際には、特別なオペランドを用意するのが基本です。従って、オペランド設定のプログラムは増加します。その時、if文にて対処することはできますが、それだと分岐数が多くて醜くなりますし、直感的な作業とは言えません。何故ならば、機能を追加したいのに、条件分岐をするという行為は、本質とは離れた行為だからです。
 人が機能を追加したい時、「条件分岐したい」と考えるでしょうか?加えて、条件分岐に頼ったプログラムは、他の条件との関連性を生み、集中力が分散してしまいます。そこで今回は、関数テーブルを用意することにし、機能を追加したい時は、関数テーブルに関数を追加する形式にしました。これで、機能の追加が直感的な作業になります。これは関数型プログラミングと宣言型プログラミングの発想ですが、C#はマルチパラダイム言語なので、これからの時代はこういった発想も求められています。
 最後に注意を書きます。ある程度役割を集中することは必要ですが、何でもできるオブジェクトを用意するのではありません。あくまでも、単一役割でオブジェクトを作成し、関連する行為を集中させるだけです。そうしないと、スパゲッティコードで溢れかえる羽目になります。無暗に役割を集中させるのではなく、集中させる基準が必要です。今回の場合私は、CPUに関する役割(命令読み取り、命令解析、命令実行)はCPU、命令に関する役割(Inc、Notなど)は実行環境オブジェクトと決めて実装をしました。そうすることにより、コードメトリックスは向上し、コードマップが簡潔になりました。余談ですが、こうした作業を行うときは、VSのコードメトリックス計算機能と、コードマップ作製機能などを、駆使するとよいと思います。続く...
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  1. インテル スレッディング・ビルディング・ブロックの概要
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