ネタつつき68-経営者は無知でいいという誤解と業界の正常化について
先ず第一に考えなくてはならないのは、経営者はどのような能力が必要かという事です。これが曖昧では話になりませんので先にそれを私なりに定義します。一言で言うならば、経営者の能力とは会社を繁栄に導く力だと言えるでしょう。会社は慈善事業ではありません。繁栄しない会社を経営する者が高い能力を持つ人とは言えないからです。では、会社を繁栄させるにはどんな能力が必要なのでしょうか?
会社を繁栄させるにはなによりもお客様が大事です。一言でいえば簡単ですが、これが非常に難しいのは皆様も御承知の事でしょう。お客様のニーズも様々で、人々の価値観は常に変化し続けます。この変化に対応したり、変化に負けない安定した価値を創出するのは並大抵の事ではありません。しかし、それをやり遂げるのが経営者に求められる能力です。お客様に見向きもされないのであれば商売になりません。
ではどうすればお客様に愛される会社が経営できるでしょうか?それは、生産性の高い会社組織にするという一点に尽きると思います。その組織というシステムを設計するのはもちろん経営者です。組織の長として、組織のシステムの運営/管理が出来ないのであれば存在意義がありません。
その組織作りが滅茶苦茶な会社が多いのがこの業界の特徴だと私は考えております。先ず第一に、経営者が無知でいいという戯言が通用するという事は、情報サービスは何も考えなくても売れると言って居るのと同じです。私は職業柄、他の業界のシステムも興味を持っていて、書籍やドキュメンタリーなどを積極的に見ていますが、他の業界で無知でもいいという経営者はいません。逆に、徹底的に調べつくして生産性の高いシステムを作っています。成功した経営者たちは、徹底的に会社というシステムの効率化を求め、他社の製品やサービスを調べ、寝ても覚めても商売の事を考えているのです。これは極当然の事です。
しかしながら、日本のIT業界は「良く分からないからいいや」というお客様の甘やかしが、ITに無知でもいいという経営者を大量に生み出しています。それでも会社の経営が成り立っているのは、ひとえに優しいお客様あっての事だと言えます。日本は信じることから始めると言う良い文化があり、その精神構造が詐欺的な会社を生かし続けています。人を信じると言うのは良い事だと私も思います。しかしながら、信じると考えないのは違います。本当に信じるのであれば、厳しくチェックしても大丈夫だと考えましょう。
IT業界の奇妙な構造は色々な原因があると思いますが、お客様のチェックが甘いというのは最大の原因だと思います。建築業界だって鑑定士は居ます。不動産だって鑑定士は居ます。美術品だって鑑定士は居ます。ならば何故ITに鑑定士を求めないのでしょうか?私にはそれが不思議でなりません。チェック機能が甘い現状では詐欺的商売がまかり通っているのが現実です。悪い人はいないと信じるのではなく、チェックしても大丈夫だと信じましょう。チェックしないというのは、現実から目をそむけているだけであり、本心から信じているのではありません。信じると言う事を勘違いしてはなりません。
この業界を正常化するには厳しいチェックが必要です。中小企業やフリーエンジニアなどのフットワークが軽い(しがらみが薄い)商売人を利用しましょう。ただし、下請けしている中小企業は大人の事情で適切なチェックが出来ないのは言うまでもありません。情報サービスを購入する際には利害関係を把握し、適切なチェックの下購入しましょう。
また、IT会社の経営者は外部の者に冷静な評価を求めましょう。そうすれば、会社の利益を損なう社員に悩まされる事もなくなり、本当に会社に貢献している人が誰だか分ります。部下を信じるのとチェックしないのは別物です。